北岳 日帰りは無理です 5 下り

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 土砂降りだ。肩ノ小屋で雨宿りしながらカッパを着た。ちょうどお昼12時ごろ。ここから頂上まで往復はどれだけ急いでも、自分なら1時間半はかかる。そこから、今まで登ってきた工程を下ると、どう考えても最終バスには間に合わない。当日、小屋に泊まることも考えたが、ひとりだと明日の朝まで時間がもったいない。

 

 引き返そうと思った。ある意味、ちょうどよかったのかもしれない。決断するきっかけとなった。もし、天候がよかったならどうしたのだろうかと今でも考える。もしかすると、タクシーで呼ぶことを前提に突き進んだかもしれないし、きりがいいので引き返したのかもしれない。

 

 雨が小降りになってきた頃を見計らって下り始めた。雨はそれ以後強くなることはなかった。比較的早くカッパを脱ぐことができた。ただ、地面が滑りやすくなっており、新品の登山靴もズボンも泥で汚れていたが、気になる余裕はまったくなかった。

 

 富士山の下りは砂走りができるので、思いの外早く下山できる。他の山でも下りは肉体的負担が軽いので早く楽に下山できる。しかし北岳の場合、一歩一歩に段差が大きいから早歩きできるところがあまりない。なんども地図アプリを確認したが全然進まないことにがっくりした。

 

 もう体力の限界、足が痛くてしょうがないと思ったが、結局、下山した。バスにも間に合った。もう山なんて行きたくないと思いつつ、来月は、比較的低い山に甥を連れて登る。

 そして、これは人生でも言えることだが、その時に辛いことは、後になると結構いい思い出になる。人生も、もう少し自分を追い込んでいこう。