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 GW(ゴールデンウイーク)前日、残業している自分にたまたま部長が話しかけてきた。

「GWはどこかへ行かれるのですか?」

どこにも行く予定は特になかった。でも、知り合いが登山を始めたとFacebookに投稿されていたから、久しぶりに登山もいいかなと思っていた。だから、その質問に対して「登山に行こうかと・・・」と返答した。

 

 4月29日、お気に入りの二つ森山へ行こうと思った。お気に入りになっている理由は、20代後半、大人になってから始めて登った山でありながら、山頂からの景色は絶景であるからだ。

 

 小牧インターから高速に乗りそして中央道へ。GWの為、いつもより混んでいた。家族ずれなのか、追い越し車線をのんびり走る車が気になった。気になりすぎていた。本当は、中津川インターで降りるはずが通りすぎてしまった。逆走できるはずもなく、次の園原インターで降りなければならない。そのインターが恵那山トンネル(長いトンネル)の先と知った時は大きく落胆した。戻って二つ森山も目指すか、せっかくだから別の山へ行くか考えを巡らした。園原インターの降りて、即、持ってきた10年以上前の登山ガイドをめくった。

 

 園原インターの近く「梨子野山(なしのやま)」に向かうことにした。

梨子野山とは、昼神温泉の北側に位置する南信濃の山で、南の鞍部の梨野山峠は信長公記に登場する。そしてこの登山道(峠道)は、木曽妻籠宿と伊那の飯田結んでいた。歴史小説に登場する峠のイメージだ。

 

 しかし、登山口がなかなか見つからない。ガイドブックが古いせいか、一度登り始めたところは行き止まりだった。ここで1時間くらい歩いてお昼になってしまった。今日はこれくらいにしておこうか。帰りに温泉に入って帰ろうという、おじさんの発想が湧いてきた。最近、本当にすぐに休憩モードになってしまう。

 

 もう1時間歩いたし、帰宅モードで昼神温泉へ行こうとした。その際、本来の登山口へ行く道と思えるところを見つけてしまった。通りすぎて昼神温泉についたものの、駐車場が満杯・・・「せっかくここまできた。そして登山口も見つけたのだから、よし登ってやろう」と気持ちが切り替わった。

 

 スタート時点で12時30分。コースの想定時間が4時間以上、結構タイトなスケジュールであった。ちょっと緊張しながら、久しぶりの登山に覚悟を決めた。

 

 分岐点までは、軽トラなら走れるぐらいの平坦で広い道で歩きやすい。少し日差しが強く汗が出てくるものの、5月の暑さなら余裕だ。ただ、虫が多く自分の耳のまわりをブンブン飛んでいるのには閉口した。何度も何度も手で払っても、ずっとついてきた。

 

 途中、山の木々を伐採したところに出た。近くに民家も見えた。こんなところに住んでいるのだろうか。

 

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   分岐点から、いよいよ人しか入れないほどの狭い登山道に入った。ここで13時30分、久しぶりの登山でゼイゼイと背中で大きく呼吸をしていたから、休憩したが、虫がまとわりついてきて気分が萎えそうになる。しかし、せっかくここまで来たのだから重い腰を上げた。

 

 日差しも木々で隠され、川のせせらぎを聞きながら、山の匂いをたっぷりと味わいなら歩く時間は心地よかった。しかし、その時間はあまり長く続かなかった。

 

 登山者が少ないのだろう。登山道に枯葉や松ぼっくりが積もっているために歩く感覚がフカフカで、急勾配になり始めた山道が歩きづらくてしょうがない。そして、花粉かホコリなのかくしゃみも出る。そして何よりも辛かったのは、やはり虫の大群が一段と増えて襲ってきた。ゼイゼイ呼吸したくても虫が入りそうなので、口に手をやって呼吸をした。なぜ自分はGWに虫の大群に襲われながら、このような苦行にしなければならないのだろうか。

 

 今回、二つ森山を登るつもりなのだから、まったく山に対して情報がない。せめて方位磁石だけでもあると、自分の立ち位置がもっとわかるのだが、それすらもない。急な坂がなかなか平坦にならず、自分の位置もわからず心が折れそうだった。ただ道は間違っていないことだけが救いだった。

 

 標高が高くなるにしたがい、足がより一層重く思うように動かなくなってきた。ある意味、久しぶりの感覚だ。辛いが、なぜか悪い気はしなかった。

 

 先に少し空き地らしきところが見えた。山頂だろうか?眼下に広がる景色も晴れてきた。(その時の写真が最初の写真)

 梨野峠に到着。山頂はまだ先であった。ガイドブックによると山頂には何もないらしい。この時、14時20分ぐらいだった。15時までに山頂に着く自信はあったが、下山した。

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 下山の際、あれだけ嫌だったフカフカの道はクッションとなり早足で下ることができた。だから虫にも追いつかれなかった。登りの環境が悪かっただけに、下山が快適に思えた。

 人生も登りから下山に向かおうとしている。快適に下山できるかもしれないし、困難に直面するかもしれない。その時、まわり道をして登ってきた経験がいきるような気がした。